売上優先・利益優先の結末
いま、ようやく歯科医院で本格的(口腔ケアをはじめ、栄養指導、食育などを含めた意味での)予防の時代が始まろうとしていると感じます。
そうなると、こぞって「予防型」の治療スタイルに転換しようという流れが始まります(ビジネス思考的に自然なことですけどね)。
この間までインプラント中心の歯科経営モデルだった医院も、「当院では予防に力を入れています」となるわけです。
その事自体は嬉しい事です。
悪いことは何もありません。
でも、予防型歯科スタイルの歯科経営は、即金型ではないんですね。
長期的に通院してもらうことで、小さな売上と「信用」「信頼」という大きな財産を積み重ねていく「資産積み上げ型」ビジネスモデルです。
最終的には、売上は上がります。でも、時間を掛けていく必要があるということなのです。
資産運用に例えると積立貯金とか、株で言うとドルコスト平均法による累投(るいとう)みたいなイメージです。
すぐにやめてしまっては、何の意味もないということになります。
以前に書いた「LTV(ライフタイムバリュー)」の考え方が重要になってくるわけです。
結局、予防であろうがインプラントであろうが、矯正であろうが、マーケティングの知識や考え方は現代の歯科医院経営には不可欠なんですね。
そして、もっと重要なのが「ブレないこと」
自分の歯科医院のコンセプト、目的を明確にして書いておいてください。
会社で言うと「社訓」みたいなものですね、歯科の世界でも流行った「クレド」という認識でもいいと思います。
そうすれば、トレンドの治療を取り入れたとしても180°方向性が変わってしまうようなことがなくなるはず。
院長先生がブレると、まず戸惑うのは先生の大切なスタッフです。
チームに変な派閥が生まれてしまい、あんなにまとまっていたスタッフ同士に溝が発生します。
そして、次に患者さんに不信感が生まれるという図式です。
僕がイチバン危惧しているのが、『予防型歯科に転換ます!宣言』をした数カ月後に、売上が低迷してしまい、その結果目先の自費、しかもそこそこの高額な単価の治療を急にセールスし始めることです。
せっかく、『なが~いお付き合い』のつもりで通院してくれていた患者さんが離れていくでしょう。
離れていくだけなら、まだマシです。
近所のレストランやカフェで、友達とのランチ・・・その時に不信感を抱いて離れていった患者さんは大きな声で熱弁を振るいます。
「あそこ、めっちゃ高い治療すすめて来るで・・気い付けたほうがいいで〜」
おー、こわっ!
やはり、信念を持った歯科経営が大切ですね。
そして、マーケティングや患者心理学、スタッフ教育の知識を身に付けること、資金繰りなどお金のことを考えておくことも大切です。もちろん、全部院長先生ひとりで出来ることではありませんので、抱え込まずに専門家やスタッフに頼めることは手放して、良い形で分担・分業・アウトソーシングを取り入れて欲しいと思います。そのほうが、良いチームが出来上がり、評判も売上もウナギ登りになるはずです。
それでは、また。