ネット通販の送料
人間の心理とは不思議なもので、払ってもイイと感じるか、払いたくない(もしくは高い!)と感じるかは、実際に支払う金額の大きさだけではないものです。
会計・キャッシュフローの観点から考えれば、実際にいくら出て行くのか(支出)の多い、少ないが重要ですから、比較して高いものは買わない、安い方を選ぶというのが、会計学?的には正解なはずですよね。
でも、人には感情があるわけです。
「これなら3,000円くらいなら払ってもいいかな」とか
「これが1万円?!安い、買っとかないと損だ!」とか、
逆に
「こんな事に300円も取られたぁ~。悔しい〜」とか
「うわっ、こっちの店のほうがトイレットペーパー10円やすかったわー(なぜか買った直後に目撃すること多し!)」とか
10円損しただけでも、そういうちょっとショックでブルーな気持ちになるものです。
普段、自転車を駆使して「1円」でも安くと、スーパーから別のスーパー、店から店へと駆けずり回って節約している女性が、30万円のバッグを安い、お得だ!と言って衝動買いして、喜び、幸せを感じてしまうのです。
「そのために毎日倹約してるのよ〜」
と言われてしまうでしょうが、お金の動き(支出)という観点だけで考えれば不可解ですよね。
感情に支配される生き物、それが「人間」なんですね。
人は理屈だけでは、割り切れない
僕自身の感覚で「何が嫌かなぁ~」と思い巡らせてみると、まず思い浮かんだのがネット通販サイトで買い物するときの「送料」ですね。
ネットで検索して、「安いやん?!」と喜んで、カートに入れて計算してみると送料が648円加算されて表示される。
よく見ると8,000円以上で送料無料!
で、迷う。送料払ったら結局、実店舗で買うのとほとんど変わらんやん。それなら実物見て買ったほうが確実やな。でも、まてよ、今、合計5,600円やからあと2,400円ちょいの商品ついでに買っとこうかな・・・
送料を払いたくないがために余分な支出をするハメになる。
通販サイトによっては、8,000円以上送料無料に対して、売れ筋の欲しい商品の多くが7,980円とかだったりするわけですよ。
これ、ひとつのマーケティング戦略ですが、結局考えるの面倒くさくなって買う事自体やめる、見送るってことにもなりかねない「諸刃の剣」。
そうなると、やはり、amazonは強いですね。
プライム会員なら、基本的に翌日届くし、通常の商品(amazonが販売主)ならほとんどの商品が送料かからないし、欲しいと思った時に注文確定すればいい。同じ日に何回買ったっていいわけでしょ。
多少、他のサイトと比べて高くても、高額商品でなければそんなに価格比較しなくても買えるわけです。
「これくらい安いもんでしょ」ではダメ
いくら良い治療でも、重要な検査でも「医院側」「先生サイド」の価値観でやってはうまくいかないことが分かると思います。
送料の例のごとく、648円でも嫌なものは嫌。
払いたくないものは、払いたくない!
先生がいくら、
「こっちは利益も乗せずに提供してるんだから!」って思いながら、
サリバテスト(唾液検査)を無理やり勧めても、
ホワイトニングの前にはクリーニングしないと意味ないんだよと言っても、その価値や意味を理解してもらっていないと、患者さんは決断したり、払ってくれたりしません。
虫歯で、のたうち回る程の痛みに耐えかねている時なら、
「何万円でも出すから、いますぐ痛みを止めてくれ」
という患者さんでも、「唾液検査しておくと、お口の状態が分かるからおすすめですよ」と初めて言われて、はい3,500円とか7,000円です、安いもんでしょって感じで言われても・・・納得しなければ絶対払いません。(いくら安くてもね)
不思議ですけど、それが人の心理です。
人は痛みを伴うものにはすぐ、いくらでもお金を出す
その痛み、苦しみからいますぐ逃れたいから!
でも、そうでないもの(緊急性がないもの)には価値を理解している状態にもっていかないとお金は出してくれない。
だから、予防型・定期管理型の歯科診療スタイルは、基礎の土台作り、布石の積み重ねが重要なのです。
僕はこれを「農耕型マーケティング」と呼んでいます。
(以前にも書きましたね)
2、3日前、テレビを観ていたら
「前歯がないのにカフェで大きな口を開けて笑っている女子ってどう思いますか?」
ってお題に対して「マツコ」が言ってました。
「歯はね、民度が関わってくるのよ・・」(言ったことば通りではないですよ。だいたいのイメージです)
だから、何も予備知識がなく、興味もない状態で、いきなり自費を売っては駄目だし、検査や手間を強制するのはNGなんですよね。
先生の患者の民度を高め(育て)てからが、そういう話題を切り出すタイミングです。
「顧客を教育する」ということが、歯科だけでなく「どの業界でも」重視されはじめているのもそういう理由です。
成熟社会・成熟経済に達した日本では、「民度」は基本的には高いと考えていいんですね。
ただ、必要なものはすでに揃っているのが普通ですから、特別に気に入った物、ステイタス感を刺激するもの、ポリシーに合ったもの、社会に貢献できると思えるものetc.でないと、食指(触手)が動きません。
服だって、ファッションや流行を気にしなければ、特に新しいものを買わなくても生きていけます。欲しいのは、かっこ良くしていたい、良く見せたい、変に思われたくない、「場」にそぐわないと見られたくない・・・という心理からです。
車格から言えば、かなり割高と思われる「新型プリウス」(福山雅治さんがCM出てるあれ!)・・・現在、納車は数カ月待ちらしいですね。
これも、ここ何年かのガソリン代が高騰(今はすごく原油価格が下がっていますけど)した経験から、ガソリン代(ランニングコスト)を取られたくない!という気持ちと、最新のクリーンで地球環境に優しいエンジンの車に乗っているという「優越感」・「貢献感」からの現象と思われます。
週に何回も乗らない人、長距離走らない人なら、普通のガソリン車やクリーンディーゼル車を買ったほうが、トータルコストは安いはず。
でも、そういうこと(低コストならいい)だけじゃないってことですね。
そういうことを「民度」が高いというのだと思います。
(※「貢献感」などを重視するタイプの人の心理考察は、また別の機会にやろうと思ってます)
自分は「損得勘定」だけで、生きているわけではない
より良い「選択」をしているんだ!と言わんばかりの心理がベースにあるんです。
だから、そういう「他者の目」人からどう見られたいのか?
を意識させるような会話を自然に盛り込んだり、
健康を増進するというよりは、
害する(損する)要因と【歯の関係】なんかを診療の度にチラッと教えてあげることが「種まき」であり、「布石」となるのです。
そういうことの積み重ねが「顧客教育」ということなんですね。
「顧客教育」「患者教育」が大切!
と聞いて、先生方がやってしまいがちなのが、授業や講義みたいなイメージのことです。
そんなことをしたら、患者さんは逃げる口実を考え始めてしまいますのでご注意を!
「先生、前に教えてくれた、あの何だっけ? 例の何とかっていうやつ?! あれやってよ」
そんな感じになれば十分なんですよね。
試験や入試の教育とは、種類が違うということをお忘れなく!
「心理トリガー」を刺激してあげて、患者さんから「あれやってよ・・」って言わせることこそ、教育です。
だから気楽にいきましょう!
変に(中途半端な知識で)会話やセールスのテクニックを駆使すると、逆効果になるかもしれませんよ。
すべては、
「患者さんのために!」
が基本です。
それが先生にも医院にも返ってくる。ただそれだけのことです。
また、分かりやすい事例・良い例えを思いついたら、
人が払いたくないと感じるお金(2)【患者さんの食指が動くトリガー考察】と題して書きますね〜
それでは、また。